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『癒す心、治る力』

オリジナルタイトル:Spontaneous Healing How to Discover and Embrace Your Body's Natural Ability to Maintain and Heal Itself

非常にユニークな経歴と経験を持つアンドルー・ワイル医師の著書の日本語版(1995年発行)です。発行当初、鍼灸を始めて間もない頃に読みました。そして久しぶりに読み返してみました。昔の私は彼の言うことを盲信していたのですが、今読んでみて、もちろん彼の信念・主張には賛成だし、私の立場(代替医療家)からすればとてもありがたい存在なのですが、彼自身の体験談を読むと、バイアスがかかっているというか、彼が代替医療に良くも悪くもこだわりがあるから効果があったのかもしれないとも思えるようになりました。

冒頭の「はじめに」の中で、「わたしは本書に「自発的治癒」(Spontaneous Healing)というタイトルをつけた。治癒というプロセスの内在的・内因的な特性に読者の注意をうながしたかったからだ。治療が好結果をもたらしたときでさえ、その結果とは、別の条件下ではなんら外部からの刺激なしに作動したかもしれないような、もともと内部に備わった治癒機構の活性化そのもののことなのだ。本書のテーマはとても単純だ。からだには治る力がある。なぜなら、からだには治癒系(ヒーリング・システム)が備わっているからだ。」(16ページ)とあり、そしてその終わりで「治癒系にかんする知識こそが回復への最良の希望になる」と締めくくっています。

本文では、前半は治癒系について、自発的治癒のさまざまな症例も書かれています。末期がんにおいて自発的治癒が発動してがんが自然消滅したという寺山心一翁氏の話もあります。がんの原因は自分にあり、がんも自分の愛すべき一部だと気づき、大胆な人生のリセットを経験したことが大きいようです。ワイルは「こころの転換が、治癒の扉をあけるマスターキーなのかもしれない」(155ページ)と表現しています。

後半は治癒系をうまくはたらかせるための方法や、病気の対処法として、各種療法が説明されています。特に最後の病気の対処法では、彼は紹介するほとんどの症例に心身相関療法(心理療法催眠療法、イメージ療法)を勧めていることに私は注目しています。
ありがたいことに鍼治療も勧められていますけれども。。。

彼はこころの四つのはたらきとして、
・信念:プラシーボ反応の基盤をなすもの
・思考:治癒を妨げるもの。仏教のヴィッパサーナ瞑想にあるような「今、ここにある現実」に注目して思考(不安、罪悪感、恐れ、悲しみなど)をしないようにする
・イメージ:こころの目に映るイメージを漠然と眺めるのでなく、意識的に治癒を促すイメージを思い描く
・感情:治癒に結びつくには、その感情がポジティブかネガティブかではなく、感情の強さである

をあげています。そして、呼吸の大切さも説いています。

この本は分厚くて、特に前半は理論的な話なので読み進めるのが辛いかもしれません。後半は実践的で、いくつかの症例が載っているので参考になるかもしれません。