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『代替医療のトリック』

先日はこのブログの右側にある本棚(ブクログ)をいろいろといじってみていました。

ブクログにはレビューを書かず、本のリストアップのみ。
こちらに私の読後感想などを書こうと思います。


オススメ本
代替医療のトリック』(2010)サイモン・シン&エツァート・エルンスト著

私自身、鍼灸はマジックだと思っています。トリックがあります。ただ、そのトリックというのは「人体の不思議」に依るもので、プラセボに依るものを期待しません。人体の知られざる不思議(トリック)を知れば、なんのことはない当たり前の体のはたらきなのですが、あまり世間に知られていないがゆえに、たとえトリックを種明かししたとしても、残念ながらなかなか理解していただけません。ただ、結果(良くなっているという事実)が伴うので、狐につままれた面持ちでありつつもわかっていただけるのがうれしいです。

そんなわけで、私の言うトリックと著者らの言うトリックの意味がちょっと違いましたが、この本は「その有効性に科学的根拠があるかどうか」の視点で代替医療に迫っていて、読者は賛否両論、極端に分かれそうです。

著者は『フェルマーの最終定理』などのベストセラーがあるジャーナリスト、サイモン・シンと、ドイツ生まれで物理学で博士号を取り、ドイツでホメオパシーを実践して、現在はイギリスのエクセター大学で代替医療学部(書かれた当時)の教授、エツァート・エルンスト。理系ジャーナリストのサイモン・シン氏がメインで書いているようですが、エルンスト教授は大学で代替医療を研究しているから、代替医療に理解があるかと思いきや、その研究はホメオパシーを否定するもの。。。

彼らなりのアプローチで、真実(その有効性に科学的根拠があるか)に迫っています。
鍼灸の真実、ホメオパシーの真実、カイロプラクティックの真実、ハーブ療法の真実。

まぁ鍼灸の話は、日本のことを書いている部分がありますが、私の知らない話なのでなんとも言えず、え~、そうなの?!という感じです。中国の鍼麻酔の話は、私も個人的にはウソっぽいかなと思います。(中国のパフォーマンスではないかと。)

鍼治療の効果を測る実験・研究については、ちょっと異議有りです。
現代医学(医薬)と同じ研究方法では、個人にカスタマイズされた鍼治療の効果は測れないだろうと思っているので、そもそも現代医学と鍼灸は土俵が違うかなと思っています。少なくとも私が実践している日本式鍼灸(皮膚にアプローチするスタイル)は、量的研究には向かないです。心理カウンセリングの研究と同じ、ケーススタディにならざる得ないと思います。

プラセボ効果をはかる比較実験も、例えば私が実践しているスタイルは皮膚表面に触れるだけで自律神経に変化がでる(測定していないので断言できませんが、呼吸が遅くなったり、脈が遅くなったり、毛穴が閉じたりする)治療なので、鍼を刺したか刺してないかでプラセボをみる実験は意味をなさないと思います。

多くの鍼灸を学べる大学ではエビデンスベースの研究が主流ですが、もしそうしなければならないなら、それはそれで、違う形で研究できるのになぁと思います。そうは言っても今更鍼灸の研究のために大学(大学院)に行く気はないんですけれども。

鍼灸に続けてカイロ、ホメオパシー、ハーブが論ぜられ(彼らの結論はお察しの通り)、最後のほうはその他の代替医療(一部取り上げると、アロマセラピー、クリスタルセラピー、人智学治療、サプリメント、指圧、スピリチュアル・ヒーリング、ナチュロパシー、マッサージ、瞑想、レイキに、なんと風水まで!)についても科学的根拠がないことやその療法の危険性まで書かれています。まぁ納得できることもあり、そういう見方もあるか、なんて新鮮だったり。ある意味興味深かったです。


ホメオパシーについては、ホメオパシーを長く専門としてきた著者がホメオパシープラセボ効果しかないと書いているわけで、実践なさっている方には彼らの批判は受け入れがたいと思います。
ホメオパシーを実践しない私にとっては批判というよりは素朴な疑問があります。レメディはその天文学的な希釈率ゆえにその成分の一個の原子あるいは分子さえも入っておらず、成分の元となる原料の影形なく、においもないのに、どうやってそれがその特定のレメディだと判断できるのでしょうか?ラベル以外、見た目ではわからず、間違って処方したり、処方されたりしても気付かないのでは?と思ったりします。

私は鍼灸同様にホメオパシーもマジックだと思っています。そのトリックは・・・
レメディそのものの効果も実際にあるのかもしれませんが、それよりも処方者(ホメオパスに限らず)が強い信念を持って処方したり、勧める(「その症状には絶対これが効くから!!摂って!!」と)。すると、その自信満々な言葉を聞いた人はそれだけで効果が出る方向に気持ちが向かうでしょう。
言葉の通じない相手(乳幼児、動物など)でも(というか、言葉が通じないからこそ)処方者が「その症状には◯◯レメディが効くはず!」と強く念じて相手にレメディを与え、そのあと「あ~、のんだからこれで大丈夫。」と安堵感を得たら、その処方者の念とか雰囲気が相手に通じ、ヒーリングシステム(自然治癒力)がうまくはたらいて効果があらわれる。
効果が出なかったときは処方が正しかったかどうかよりも、処方者の自信がなかったとか、念が足りなかったからということはありうるかもしれません。

また、レメディが個々の体質・体調に合わせて処方されるのであれば、それは日本式鍼灸のようにやっぱり科学的な量的研究には不向きで、ケーススタディという形でしか研究できないんじゃないかと思います。

著者らはホメオパシーのレメディの価格についても、一石を投じています。原材料から考えたら高すぎる、と。でも消費者側も高かったらその分効果があると期待するし、安かったら信用しない傾向もあることは否めませんが。

また、レメディを対処療法的に使うなら、それは現代医学となんら変わらないと思います。個々の体質を考慮するならば、傾向はあるにしても個々の処方は変わるはず。それは例えば放射能被ばくに対しても。長崎原爆で被ばくした秋月辰一郎医師が示すとおり、体内が放射能で汚染されたとしても、体質や食事によって原爆症白血病等)を発症する人としない人がいる。だとしたら、レメディは慎重に決められなければならないと思うのですが、実際のところはどうでしょうか?放射性物質に対する対処(対症)療法的になっていないでしょうか?それはそれでいいのでしょうか?

そして最も問題とすべきことは、この本の中で指摘している通り(例:マラリア・レメディ)、現代医学で保証された効果を否定してまでホメオパシーを第一に選択して、命を落とした人がいることです。本人だけならまだ納得できますが、他人の命までも左右させるような。施術者だったらそのクライアント、母親だったらその子どもの命。。。

ホメオパシーについては私の親類~普通の主婦なんですけれども~に虚弱体質の息子がいて、もう10年以上も前からホメオパシーを実践しているのですが、どうも宗教のようなところがあり、盲信することの危険性は感じていたので、ついつい長くなってしまいました。すみません。


私たちは科学が発達した現代に生きているのですから、代替医療はあくまでも代替補完、現代医学で苦手な分野を担えばいいんじゃないかなぁと思います。
薬を飲みながらでも代替医療を受けることは可能ですし、代替医療で気分が楽になるなら、私はそれで代替医療は役目を果たしていると思います。私は鍼灸を実践していますが、自分の力量の範囲で自分に実践しますし、それを超えて抗生物質が必要なときは摂ります。私の子どもにも薬が必要なときは飲ませます。

それと、人工=悪、自然=善というイメージがありますが、自然に任せることが必ずしも人間にとっていいわけじゃないです。例えば子どもが中耳炎で鼓膜が破れたとき、自然に破けると治りが悪いけど、破ける前に医者にかかってキレイに穴をあけてもらったらその一点だけでキレイに早く鼓膜が再生するとか。実はお恥ずかしい話ですが、私の息子は何度か耳を痛がっていたところ、はり治療で緩和しているうちに、最終的に鼓膜が破けてしまい、大変なことになりました。早く医者に診てもらえばよかったです。

結局大切なのは、実践家も受ける人もフレキシブルであること。現代医学にも、代替医療にも一辺倒にならないことではないかと思います。

そもそも病気や怪我さえもそのとき必要だから発生しているわけで、治るも治らないも、症状が落ち着くも落ち着かないも、その人次第じゃないかなぁ。。。ヒーリングシステムが機能しているかどうか、で。「健康であるための本質的なこと」がわかっていれば、誰でもどの治療法に依ったとしても自動的に(自然に)ヒーリングシステムがはたらいて快方に向かうように私たちの体はできていると思います。

どんな代替医療でも、人それぞれ、そのときどきの体質・脳(=心、情動・感情・意識・潜在意識など)が違う以上、一律の条件で多くの人々に実験をすること(量的研究)はほぼ不可能で、科学的根拠を示すことは難しいと思いますし、実際に代替医療を受ける方には目安にはなりこそすれ、必ずしも必要ではないと思います。
ただし、有効性が科学的に証明されない以上、(代替医療の実践家が自信をもつことは大切だけど)「この症状にはこれが効く!」と断言することは避けるべきじゃないかと思うんです。実践家ができることは、「健康であるための本質的なこと」がわかっていない(気づいていない)クライアントさんのヒーリングシステムがうまくはたらきだすように(気づく方向に)、クライアントさんの一歩先にいてその人に合う方向に導くだけかなと思います。私の場合はクライアントさんに鍼灸マジックを楽しんでいただきながら♪


オリジナル
"Trick or Treatment" (2008) Simon Singh & Edzard Ernst, MD
ちなみにこの英語本も持ってますが、読んでません。。。